水だけで育つ野菜が存在するのはなぜ?

水に肥料を溶かした培養液やスポンジなどで土の機能を代替させているため

みなさんはスーパーマーケット等でスポンジがついた状態で販売されているミツバを見たことがあるでしょうか? このような野菜は、土をまったく使わずに栽培する「水耕栽培」という方法で栽培されています。実際には、水耕栽培では土を使わずに水だけで栽培するのではなく、肥料を溶かした水である「培養液」を用いて栽培しています。また、土の代わりに砂やヤシガラなどの資材を用い、そこに「培養液」を与えて栽培する「養液栽培」の方法も広く実用化されています。
水耕栽培や養液栽培の比率が高い作物としては、葉菜類(茎葉を食べる野菜)では、ミツバ、小ネギ、レタスなどが挙げられ、果菜類(果実を食べる野菜)では、トマト、パプリカ、イチゴなどが挙げられます。また、近年話題になっている植物工場でも、基本的に土を使わない「水耕栽培」、「養液栽培」が前提になっています。
学校では、「植物の生育には、土・太陽・水の3要素が必要」と習った方も多いかと思いますが、では、土なしで植物の栽培がどうして可能なのでしょうか?
土の機能には①肥料を保持・供給する、②水を保持・供給する、③酸素を保持・供給する、④植物を固定する、の4つの役割があります。逆に、それら4つの役割が満たされれば、土はなくても栽培は可能ということになります。実際に水耕栽培では、肥料を適当な比率と濃度で水に溶かした培養液に、酸素を供給して溶存酸素を富化させ、野菜を効率よく安全に生産しているのです。また、植物の固定は、スポンジなどに播種して発泡スチロール等の資材に挟み込んで行っています。ミツバなどの作物は水中に根を伸ばし、ふんだんな水や肥料を充分吸収できるので、成長が大幅に促進されます。
(千葉大学園芸学部 丸尾 達)

写真 ミツバの水耕栽培

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