アサギマダラはなぜ、1000kmも飛ぶことができるのですか?

飛ぶために多くの時間とエネルギーを使えるなどの特徴があるため

アサギマダラは名前の通り、翅の地色が浅葱色(薄い青緑色)をしていて、黒~茶色のまだら模様のある大型でとても美しいチョウだ。
このチョウは非常に長い距離を飛ぶことで有名で、質問にある1000 kmをはるかに超えて、日本から台湾や中国本土まで2000 km以上飛んだという記録もある。春から夏にかけては北東方向に移動し、秋には逆に南西方向に移動する。このように長距離を移動する理由としては、アサギマダラの生活に適した温度の幅が狭いので季節ごとに棲む場所を変える必要がある、好みの花の開花時期に合わせて移動する、棲む場所を変えることで寄生虫の寄生から逃れている、などのいろいろな理由が考えられている。
では、一体アサギマダラはどうしてこんなに長い距離を飛ぶことができるのだろうか? その第一の理由として、アサギマダラが毒を持っていることを挙げることができる。アサギマダラの幼虫が食べる食草の葉と成虫が好んで吸う花の蜜の両方に毒が含まれていて、食物をとったアサギマダラの体も毒を帯びることになる。そのおかげで、鳥などから攻撃されづらくなって、飛ぶことに専念できるのだろう。
また、アサギマダラは成虫になってから交尾して卵を産めるようになるまでに数週間と他のチョウよりも長くかかる。この間は交尾や産卵にエネルギーを使う必要がなく、体内のエネルギーを飛ぶことにより多く使うことができる。成虫寿命そのものも4~5か月とチョウとしてはかなり長く、その分長い時間にわたって飛ぶことができる。さらに、風にのって飛ぶのもうまいようだ。
このように、敵に襲われづらく、飛ぶのにたくさんの時間とエネルギーを使うことができ、高い飛行技術を持っている、などの特徴があいまって、ものすごい距離を飛ぶことができるのだろう。
(農研機構 神村 学)

花の蜜を吸うアサギマダラ

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