「子供の科学AR」開発者スペシャルインタビュー

はやぶさ2が飛び出す「子供の科学AR」アプリはもう楽しんでくれたかな?
このアプリを制作してくださったのは、ゲームのPVや企業VPなどの動画制作からVR・AR・MRの映像開発まで幅広く手がけるギークス株式会社、動画事業本部のエンジニアである寺田朝樹さん。
実は、寺田さんは偶然にも元「子供の科学」読者!
今回は、寺田さんに「子供の科学AR」制作の裏側からプログラミングとの出会いまでさまざまなお話を伺ったよ。将来はプログラミングをいかした仕事をしたいというキミは必読だ!

取材・文/編集部

寺田朝樹(てらだ・あさぎ)さん

寺田朝樹(てらだ・あさぎ)さん

1994年生まれ。鎌倉出身。ギークス株式会社でエンジニアとして活躍。小学生のときの将来の夢は科学者で、中学生のときの将来の夢は小説家だったそう。


知らないジャンルに飛び込みながら……

編集部
寺田さんはエンジニアをされていますが、具体的にはどういうお仕事をしているのですか? プログラマーと呼ばれる仕事とも違うのでしょうか?
寺田
簡単にいうと、エンジニアは企画全体に関わる人で、プログラマーは指示された内容をコードに変換する仕事をする人です。エンジニアは、プログラムをつくり始める前から打ち合わせなどに参加して、どのようにつくりたいか依頼者の要望を聞いて、こういうふうにやればできる、それはできないけどこれならどうだろう?という提案をしたりします。条件を詰めることが、エンジニアの大事な仕事ですね。
編集部
なるほど。今回であれば、「はやぶさ2」をこういうふうに動かしたいとか、こんなアクションをつけたいとかそういう要望を聞いて、具体的にどういう段取りでどんなプログラムをつくるか考える……という作業ですね。
寺田
そうですね。
編集部
今回の企画で大変なところはありましたか?
寺田
もともと宇宙に詳しいというわけではなかったので、科学の専門的なチェックが入ったときに大きな修正があったら大変だな……と心配はしていました。結果的にはそれほどの修正はなかったので、安心しました。また、編集部の方とのやりとりもこまめにできたので、その点はやりやすかったです。
はやぶさ2のARを試してみる寺田さん。
はやぶさ2のARを試してみる寺田さん。
編集部
それまで知らなかったジャンルのことを調べないといけないことも多そうですね。
寺田
そうですね。いろいろなタイプの仕事がくるので、知らなかったことを調べて理解するということが大変な場合もあります。でも、今まで依頼された仕事のテーマに興味が持てなかったことはなくて、実際に手を動かしながら知っていくと何でもおもしろいです。
編集部
今回つくられた「はやぶさ2」で工夫されたところは何ですか?
寺田
工夫したところは、8月号の25ページのものであれば、くるくる回すときの操作感ですね。27ページの2つ目のものでは、アニメーションを再生している間にARマーカーがスマホの画面から外れても状態がリセットされないようにして、使っている人があまり不便だと思わない動きにしようと考えました。

子供の科学AR
制作のウラ側

今回の「はやぶさ2」のARはどうやってつくられたんだろう? 制作のウラ側を少し紹介。

はやぶさ2にどんな動きをさせるのか決まったら、まずは単純なグラフィックで基礎的な動きをつくる。必要な動きがつくれたら、実際の3Dモデルを投入して制作を開始(写真①)。マテリアル(ものの表面の質感)を調整したり(写真②)、動きに合わせて煙やジェット噴射などの効果(「パーティクル」と呼ばれる)をつくっていく(写真③)。モデルや動きに対して、新たに依頼者から指示や要望がきたら、適宜反映する作業を進めていく。作業は基本的にUnityと呼ばれるゲームエンジン(ゲーム開発を助けてくれるソフトウェア)で行う。

  • 1①作業画面内に3Dモデルを配置したところ。
  • 2②はやぶさ2の太陽光パネルの表面の質感を調整しているところ。右側下のパネルの数字をいじると、質感を変えることができる。
  • 3③パーティクルと呼ばれる効果をつくっていく。写真は、煙の効果を作成中。煙が多すぎて、光っているように見えている。
  • 4④はやぶさ2のアクションをプログラムした画面。画面をタップすると、アニメーションがスタートするようにつくられている。

プログラミングとの出会いは「子供の科学」

編集部
寺田さんにとって、プログラミングの魅力って何ですか?
寺田
単純に、つくると動くことがおもしろい。ものをつくりたいという欲求が根底にありますね。
編集部
小さいころからものづくりは好きだったんですか?
寺田
ものをつくるのは好きだったんですけど、全然器用じゃなくて……。折り紙とか工作は苦手で、小学生のころの図工の成績は「2」でした。そんな不器用な自分にとって、プログラミングのよいところは試行錯誤できるところ。とにかくどんどんつくって動かせるというのが自分に合っていました。
編集部
なるほど。ちなみに、3D映像を制作する上では図工の才能はあんまり関係ないですか?
寺田
パース線に合わせて要素を置いていく作業なので、あまり関係ない気がしますね。3Dって、数字で表せるんですよ。どれくらい回転しているかとか、全部数字で出る。だから、感覚的にわからなくても大丈夫なんです。ただ、今回の「はやぶさ2」制作でも使ったUnityは、数字を見ても見なくてもわかる仕様になっている点が優れていると思います。感覚的にもつくれるし、論理的にもつくれる。
編集部
寺田さんが最初にプログラミングに出会ったのはいつだったんですか?
寺田
小学生のときに読んでいた「子供の科学」ですね。JavaScript(※プログラミング言語の1つ)の連載があったんですね。
編集部
2003年10月号から始まった「JavaScriptでチャレンジ! かんたんプログラミング」です。
寺田
その連載の中で、スロットをつくる回があったんです。当時、ゲームの「ドラゴンクエスト」にハマっていたんですけど、ゲームの中にスロットが出てくるんですよ。それで、「自分でもスロットがつくれるんだ!」と思って、コードをそのまま写しました。
編集部
まさにそれが寺田さんのプログラミングデビューだったんですね。
2006年1月号 連載「JavaScriptでチャンジ! かんたんプログラミング」
連載「JavaScriptでチャンジ! かんたんプログラミング」。
2006年1月号に掲載されていた回では、スロットマシーンのつくり方を紹介していた。
寺田
そうです。当時は中古で譲ってもらったWindows95を使っていました。スロットのプログラムは結局ちゃんと動かせなかったんですけど、でも見ながら書くだけでもおもしろくって。それがプログラミングを始めるきっかけになりました。
編集部
「子供の科学」にとっても、とても嬉しいお話です。他に印象的だった記事などはありますか?
寺田
読者の写真投稿コーナーが好きでした。昆虫の接写写真、金星大接近など、科学的できれいな写真がたくさん載っていて、いろいろなことに興味を持つきっかけになったと思います。
編集部
その後、寺田さんはプログラミングのスキルをどんどん磨いていくことになるんですか?
寺田
そうですね。紆余曲折はあるんですけど、中学生のときは、ノベルゲーム制作ソフトを使ってノベルゲーム(※主に文章を読むことでストーリーが展開していくゲームのジャンル)をつくっていました。そのときは、ゲームがつくりたかったんですよね。高校は、入学した学校が英語とプログラミングに力を入れていて、パソコンの購入が必須だったんです。その時期はいろいろやりたくって、中古のパソコンを買ってきて中身を真っ白にして、Linuxというあまり一般向けには使わないようなOSを入れて、サーバーを組んで遊んだり。
編集部
プログラミング言語としては何を使っていたんですか?
寺田
C言語ですね。今は、C++とかC#を使っています。

ホロレンズに憧れて……ARやVRが絶対にくる!

編集部
現在の会社に入られるきっかけは何だったんですか?
寺田
ずばり、Microsoftが出している「ホロレンズ」が触りたかったんです。ホロレンズとは、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)型のホログラフィックコンピューターです。シースルーになっているレンズの部分に3D映像を写したりして、ARを実現する装置です。日本では2017年1月から発売開始になったのですが、とにかく高くて……。
憧れたったホロレンズを使って遊ぶ寺田さん
憧れだったホロレンズを使って遊ぶ寺田さん。
編集部
それなら仕事でホロレンズを使えるところへ行こう、と。
寺田
そうです。必死に探しました(笑)。入社してしばらくは、ずっとホロレンズをいじっていました。
編集部
なぜ、それほどホロレンズに憧れたんですか?
寺田
ARやVRにすごく興味があって。『電脳コイル』、『ソードアート・オンライン』といったアニメ作品の影響も大きかったですね。どちらの作品にも、CGが現実に存在しているように見えるデバイスが登場するのですが、これを実現できる日が来たら楽しいんじゃないかな?という気持ちが強かった。今、仕事では、ARやVRに関わるものをメインにしているので、やりたいことがやれていますね。

寺田さんがつくった
ホログラム作品

寺田さんが研究と遊びを兼ねてつくった作品をご紹介。社長を自由自在に操れちゃう!?

寺田さんがホロレンズの研究開発を進める中で制作したホログラム作品。自由に使える3D素材を探していたところ、フィギュア作成用につくられたギークス株式会社社長のスキャニングデータを発見。そのデータをもとに、コントローラーで社長を走らせたり、ジャンプさせたりすることができる作品に仕上げた。

  • 1①暗闇に浮かび上がるのは、モデルとなったギークス株式会社の曽根原社長の姿。
  • 2②コントローラーを使うと自由に社長が動かせる。
  • 3③……って操作しているのは社長ご本人!?

プログラミングを始める読者へのメッセージ

編集部
小学生だった寺田さんが「子供の科学」を読んでプログラミングを始めたように、プログラミングに興味を持ち始めている読者がたくさんいると思います。何かメッセージはありますか?
寺田
そうですね。何でも挑戦してみたらいいと思います。例えば、僕は図工の成績はよくなかったけど、嫌いだったわけじゃないんです。一生懸命つくっていて、でもダメっていう……。それで、その才能がないことに気づかせてもらったんです。今プログラミングを仕事にしているのは、いろいろ試してみた結果だと感じます。
編集部
最近では、パソコンやタブレットなどいろいろな機器が手軽に手に入るようになっていますし、プログラミングにより挑戦しやすい環境になっていますよね。
寺田
個人的にはパソコンでプログラミングに挑戦してみてほしいですね。タブレットは便利ですが、いじれる範囲が少ない。パソコンのOSを徹底的にいじってみるのも楽しいですよ。OSが動くには何が大事なのか、OSの動作を変えたいときどうすればいいのか……あれこれ試すと、いろいろなことがよくわかります。
編集部
なるほど。今日はありがとうございました!
当時小学生だった寺田さんが読んでいた時期の「子供の科学」と記念撮影
小学生だった寺田さんが読んでいた当時の「子供の科学」と記念撮影。
協力/ギークス株式会社
https://geechs.com

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