心臓の筋肉はなぜ疲れて止まらないんですか?

血液をたくさん受けとっているから

心臓の筋肉はずっと働き続けても疲れないのに、手足を動かす筋肉(骨格筋といいます)は少し運動を続けていると疲れてきます。心臓の筋肉が疲れない理由を知るためには、疲れた骨格筋で何が起こっているかを知るのが近道です。

骨格筋は神経の指令を受けると、エネルギーを蓄えたATP(アデノシン三リン酸)という物質を分解して収縮運動を始めます。ところが骨格筋の細胞の中にあるATPはごく少量なので、他のエネルギー源を使ってATPをつくってやらないといけません。そのために酸素を使わないで短時間でエネルギーを得る方法と、酸素を使って長時間にわたってエネルギーを得る方法があります。100mを走るくらいの短時間の運動でしたら、酸素を使わないでもできますが、もっと長い距離を走るときには、筋肉に酸素を供給しないと続けられません。激しい運動を続けたときに、呼吸が激しくなり、心臓の脈拍が増えて、全身の筋肉に酸素を送り届けるための血液の量は20倍にも増えます。

では、心臓の筋肉にはどの程度の血液が送られているのでしょうか。心臓の重量は体重の0.5%くらいです。心臓の筋肉が受けとる血液の量は、心臓から送り出される血液の約5%です。これに対して骨格筋の重量は体重の30%くらいで、受けとる血液の量は約15%です。心臓の筋肉は骨格筋よりも20倍も多くの血液を普段から受けとっているのです。激しく運動をして心臓が送り出す血液量が5倍くらいに増えると、心臓が受けとる血液量は5倍くらいに、骨格筋が受けとる血液量は20倍くらいに増えます。

つまり心臓の筋肉は、普段からたくさん血液を受けとっているし、激しく運動しても充分な血液を受けとるので、疲れることがないのです。

全身への血液分配

例えば体重50kgの成人なら心臓の重量は約250g、骨格筋の重量は約15kg。
心臓の筋肉が1分間に受け取る血液の量はおよそ250ml、骨格筋の受け取る血液の量はおよそ900mlになる。

坂井建雄(順天堂大学医学部)

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